最終更新日 2026年10月13日 by amajaz
車載電子部品メーカーで、生産技術を18年担当してきた工藤です。
2液の混合吐出ラインを立ち上げていたころ、昼休み明けに吐出圧がじわじわ上がり、気づいたらスタティックミキサの中が固まっていたことがあります。
止まっているあいだに何が起きているのかが分かれば、再開の手順で迷わなくなります。
止まっていても、ミキサの中では反応が進んでいる
主剤と硬化剤は、混ざった瞬間から反応を始めます。
ラインを止めても、ミキサの中に残った樹脂の時計だけは止まりません。
岐阜県産業技術総合センターの二液型接着剤の混合比を安定化するデバイスの研究報告も、混合直後から硬化が始まるので可使時間内に作業を終える必要があり、ミキサ中に残った接着剤は使えず廃棄される、と書いています。
同じ報告では、市販ミキサの使用後の残留量を1.9gと測っています。
ポットライフは、この残った分がいつまで使えるかの目安です。
JIS K 6870:2008には求め方が6通りあり、そのひとつは、スタティックミキサを通して押し出した量が合意した水準まで落ちるまでの時間で決める方法です。
ミキサから出にくくなった時点を、そのままポットライフとみなす考え方もあるわけです。
ただし、JISの試験は成分を23℃±2℃に保って行います。
Henkelの2液エポキシ LOCTITE EA E-05MRの技術データシートにも、量が多いほど、温度が高いほど作業時間は短くなるとあります。
夏場の工場では、カタログの数字より早く固まると見ておくほうが安全です。
再開前にやること
私が現場で決めていた順番は次のとおりです。
| 順番 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 古いミキサを外し、新品に替える | 中の樹脂は反応が進んでいる |
| 2 | 最初の吐出は捨て打ちする | 入口付近の未混合分や気泡を出す |
| 3 | 色ムラと硬化の具合を見る | 混合比のずれに早く気づく |
| 4 | 1ショットの重さを量る | 詰まりかけを数字で見つける |
1と2は、先ほどのHenkelのデータシートにも書かれています。
使いかけのカートリッジを再開するときは古いノズルを捨てて新品を付け、25〜50mmほど出してから本番の塗布に入る、という手順です。
捨て打ちした樹脂の扱いにも注意が要ります。
- 紙コップに溜め続けない
- 平らな容器に薄く広げて固める
- 捨て打ちの量は、材料とミキサの組み合わせごとに社内基準として決めておく
セメダインの工業用Q&Aによれば、2液のエポキシ系やアクリル系を紙コップなどで多量に混ぜると、反応熱がこもって発煙することがあります。
止まることを前提に装置を選ぶ
休憩も段取り替えも、ラインには必ずあります。
だから装置選びの段階で、止めたときの扱いやすさまで見ておきたいところです。
ナカリキッドコントロールは、使い捨てのスタティックミキサを「ポットライフの短い2液樹脂の混合や、洗浄液を使用できない環境」向けとして扱っています。
同社のテストルームの申込フォームには、ポットライフを温度とあわせて書く欄があります。
材料の条件を最初に伝えておけば、停止明けの話まで含めて相談しやすくなります。
協働ロボットに2液ディスペンサを載せた例としては、ナカリキッドコントロールが公開している放熱用2液ギャップフィラーの混合吐出デモが参考になります。
まとめ
ポットライフは、ラインが止まっているあいだも減り続けています。
再開時は「ミキサ交換、捨て打ち、色の確認、重さの確認」の順で進めれば、詰まりや硬化不良をかなり防げます。
私自身、昼休み明けの失敗をしてから、停止時間を記録するようになりました。
地味な作業ですが、トラブルの原因を追うときに一番役に立ったのはこの記録でした。